最終更新:2025-12-29
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はじめに
密度汎関数法(DFT)の局所スピン密度近似(LSDA)において、交換・相関エネルギー汎関数 の記述は計算精度を決定づける中心的な課題である。交換項に関しては均一電子ガスに対する厳密解(Dirac交換)が存在する一方で、相関項に関しては解析的な閉じた形式が存在しない。そのため、様々な近似式が提案されてきた。
本稿で取り上げる PL (Perdew Local)、あるいは文献によっては PZ81 と呼称される汎関数は、1981年にJ. P. PerdewとA. Zungerによって発表された論文 “Self-interaction correction to density-functional approximations for many-electron systems” の中で定義された局所相関汎関数である。
この論文の主眼は「自己相互作用補正(SIC)」の提案にあったが、その補正を適用するベースラインとなるLSDA相関項として、当時最新であったCeperleyとAlderによる量子モンテカルロ計算の結果をパラメーター化した式が導入された。このパラメーター化された相関汎関数自体が、その後の計算化学・固体物理学において、一つの標準的なLDA相関汎関数として広く利用されることとなった。
1. 均一電子ガスの相関エネルギー
局所密度近似の基礎となるのは、均一電子ガス(Jellium model)のエネルギー密度である。PerdewとZungerは、相関エネルギー を、密度パラメーター およびスピン分極率 の関数として記述した。
1.1 密度パラメーターの定義
電子密度 (論文中の表記は )に対し、Wigner-Seitz半径 は以下のように定義される。
これは、電子1個が占める球の半径(ボーア半径単位)に相当する。 が小さい領域は高密度極限、大きい領域は低密度極限に対応する。
1.2 量子モンテカルロ法による参照データ
1980年、CeperleyとAlderは、Green’s Function Monte Carlo (GFMC) 法を用いて、均一電子ガスの基底状態エネルギーを極めて高い精度で計算した。PerdewとZungerは、この数値データを「正確な解」と見なし、これを再現するための解析的な関数形を設計した。
原著論文のTable Iには、フィッティングに用いられたモンテカルロデータの値が示されている。
- 非磁性状態(Unpolarized, ): スピンアップとスピンダウンの電子数が等しい状態(常磁性)。
- 完全強磁性状態(Polarized, ): 全ての電子のスピンが揃った状態。
2. PL汎関数の数理構造
PerdewとZungerによる相関エネルギー のパラメーター化の特徴は、高密度領域()と低密度領域()で異なる関数形を用い、それらを で接続している点にある。
2.1 高密度領域 ()
高密度極限()においては、Gell-MannとBruecknerによるランダム位相近似(RPA)の級数展開が正当となる。PerdewとZungerは、この理論的極限を尊重し、以下の対数形式を採用している。
ここで、 と はGell-MannとBruecknerの理論値に基づいている。
- 非磁性状態 (): ,
- 強磁性状態 (): ,
論文中の式(5)では、より高次の項として や の項が含まれているが、これらは滑らかな接続のために導入された補正項である。
2.2 低密度領域 ()
金属や半導体の価電子密度に対応する低密度領域、およびそれ以上の希薄領域において、PerdewとZungerはCeperley-Alderのデータを再現するために、以下の有理関数形式(Rational Approximation)を採用した。
この形式は、分母が の多項式で構成されており、以下の特徴を持つ。
- 漸近挙動: において、 となり、Wigner結晶の相関エネルギーの主要項()と整合するよう設計されている。
- パラメータ決定: 係数 は、Ceperley-Alderのデータに対する最小二乗法等のフィッティングにより決定された。
2.3 パラメーターセット
原著論文の式(10)および(11)において、具体的な数値が与えられている。
非磁性状態 (, )
- :
- :
強磁性状態 (, )
- :
- :
注意すべき点は、高密度側の式における第3項、第4項の係数(に相当)は、理論値そのものではなく、 において低密度側の式と値および一次導関数が連続するように調整されたフィッティングパラメータであるという点である。
3. スピン補間公式
任意の局所スピン分極率 を持つ系への拡張は、von BarthとHedinによる補間公式を用いて行われる。
相関エネルギー は、非磁性状態 と強磁性状態 の間を以下のように補間する(式(6))。
ここで、スピン補間関数 は交換エネルギーのスピン依存性から導かれるものであり、以下の形を持つ。
この関数の性質は以下の通りである。
- : 非磁性状態を再現する。
- : 完全強磁性状態を再現する。
- 厳密な交換エネルギーのスピン依存性を模倣しており、相関エネルギーに対しても良い近似となると仮定されている。
4. 物理的妥当性と議論
4.1 RPAとの比較
PerdewとZungerは論文中で、彼らのパラメーター化(PL)と、従来用いられていたRPAに基づく相関エネルギーとの比較を行っている。 RPAは高密度極限では正しいが、金属密度領域()においては相関エネルギーの絶対値を過大評価する傾向がある。Ceperley-Alderのデータに基づくPL汎関数は、この領域においてRPAよりも浅い(絶対値が小さい)相関エネルギーを与え、物理的により正確であると結論付けられている。
4.2 VWN汎関数との関係
ほぼ同時期(1980年)に、Vosko, Wilk, NusairもCeperley-Alderデータに基づいた相関汎関数(VWN)を発表している。
- 関数形の違い: VWNはPadé近似を用いて全 領域を単一の式で記述するのに対し、PLは で関数形を切り替える区分的(Piecewise)な定義を採用している。
- 実用上の差異: 数値的な振る舞いとしては両者は非常に近い値を与える。PLの形式は計算機実装において平方根や対数のみで構成されるため比較的単純であり、Perdew-ZungerのSICの実装において標準的に用いられることとなった。
4.3 連続性の問題
PL汎関数は において値と一次導関数が連続するように設計されているが、二次導関数()に関しては不連続性が残る可能性がある。これは、ポテンシャル(一次微分)までの計算には影響しないが、応答関数やヘシアン(二次微分)を必要とする計算においては、数値的な不安定性を引き起こす要因となり得る。この点において、全領域で滑らかなVWN形式の方が解析的には有利な場合がある。
5. 応用:自己相互作用補正 (SIC)
本論文の主題は、LDAが抱える自己相互作用誤差(Self-Interaction Error: SIE)の補正にある。 PerdewとZungerは、全エネルギー から、各軌道密度 が自分自身と感じる相互作用(自己ハートリーエネルギーおよび自己交換相関エネルギー)を差し引くスキームを提案した。
この式における として、本稿で解説したPL相関汎関数とSlater交換汎関数が用いられた。PL汎関数は、SICの文脈において「自己相互作用をキャンセルするための参照汎関数」として極めて重要な役割を果たした。特に、相関エネルギーの自己相互作用部分はゼロではないため、正確な相関汎関数のパラメーター化が不可欠であった。
結論
Perdew Local (PL) 相関汎関数は、Ceperley-Alderによる高精度な量子モンテカルロ計算の結果を、実用的な密度汎関数計算に取り込むために開発された初期のパラメーター化の一つである。 その単純な数理構造(での接続、有理関数近似)と、物理的に妥当な極限挙動(高密度での対数発散、低密度での逆数依存)により、LSDAの標準的な構成要素としての地位を確立した。 現代においては、より洗練されたGGAやMeta-GGA汎関数が開発されているが、それらの多くも局所部分の記述においてはPLやVWNといったLSDAのパラメーター化を出発点としており、本汎関数の物理的意義は失われていない。
参考文献
- J. P. Perdew and A. Zunger, “Self-interaction correction to density-functional approximations for many-electron systems”, Phys. Rev. B 23, 5048 (1981).
